童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

コリアン文化の洗礼

右派政権が長期化しているせいか、近年ずっと嫌韓ブームが続いている。
本屋に行けば、ヘイトに満ちた煽り文が踊る本が平積みにされていて、何とも窮屈な世の中になったものだとうすら寒くなる。
Twitterでもブログでも、定型文のような虚実織り交ぜたヘイトメッセージがやり取りされていて、とにかく居心地が悪い。
10年ほど前の韓流ブームがまるで嘘だったかのような事態だ。

個人的には、かつてのように必要以上にもてはやすことも、現在のように貶めることも、どちらにも嫌悪感に近い違和感を感じる。
臆病なせいか、そもそも国籍とか性別とかマイノリティを産みやすいものがブームになるのは、危険な匂いを感じて穏やかでいられなくなる。
もちろんブームによって消費されるようになると、その文化がより発展することは良くあることだ。
例えば、19世紀葛飾北斎伊藤若冲がヨーロッパで大ブームになって印象派絵画に大きな影響を与えたことは有名な事実だ。
でも、近年日本で巻き起こっているブームは、そういった健康的な文化交流とは毛色が違って見える。
むしろ、いたずらに卑屈あるいは攻撃的になることで何とか自我を保とうとしているように見えて、自らの文化に対する自信のなさを如実に表しているように感じられる。
やけに日本文化を持ち上げるテレビ番組が増えていることも、その一つと言える。

僕が小中学生だった90年代から2000年代前半も、様々なものが流行っていたという記憶があるが、少なくとも最近ほど国籍を意識することはなかった。
例えば、当時BoAさんが精力的に活躍していたが、彼女の音楽を韓流と括ったり国籍を気にして聴いていた人はほとんどいなかったはずだ。
国どうしの事情を気にして互いの文化を色眼鏡なしで楽しめないのは、何とももったいないし、とてつもなくダサいと思う。
近年の風潮への抗議の意味も込めて、現在に至るまで、僕自身が好きだと思ったものの中から、実はコリアン文化と関わりがあると後から判明したものをピックアップしてみた。

 

まずは音楽分野から。

筆頭は何と言ってもm-floだろう。
自分と同じ世代で、come againを一度も聴いたことのない人がいるだろうか。
これ以降のJ-POPにも間違いなく影響を残したグループだと思う。
未だにふとした瞬間に彼らの曲を聴きたくなる。
メンバーであるVERBAL氏が在日コリアンであることを知ったのはつい最近のことで、それもネットの誰かの残したコメントだった。
当時そんなことを気にしていた人は皆無だったはずだ。
折角なので、彼らのlovesシリーズの中でBoAとの一曲を貼っておく。


m-flo loves BoA / the Love Bug

一部の右翼の皆さんに何故か蛇蝎のごとく嫌われているが、在日コリアンと関わりの深いアーティストは当時多かった。
例えばソニンさん。
EE JUMPとして3人組でデビューするはずが一人抜け、二人抜け、いつの間にかソロになっていた悲劇の人である。
ソロになって出した彼女の不遇を反映したかのようなしょっぱさ全開の曲「カレーライスの女」が強く印象に残っている。


(PV) ソニン カレーライスの女

楽曲を好んで聴いていたわけではないけれど、バラエティなどで見られる飾らない人柄に好感を持っていた。
テレビで見る機会は減ってしまったが、舞台を中心に活躍して評価も高いようで、勝手に嬉しく思っている。
その他にも、Crystal Kayさんなんかも在日コリアンとアメリカ人のハーフだったりする。
ちょっとこじ付けっぽいが、当時の小中学生は、知らないうちにコリアン文化の洗礼を受けていたと言えるかも知れない。
今更、彼らを否定することは、最早自己否定にも繋がりかねない。

 

音楽のほかに、漫画についても紹介しておきたい。
最近、個人的にXOYというWEBコミックのサイトにハマっている。

xoy.webtoons.com

世界中で描かれた漫画作品を日本語に訳して公開しているサイトで、これがなかなか面白い。
元々このサイトを知った時には、普通に日本の漫画家さんたちのサイトなのだろうと思っていた。
読んでいる内に違和感を感じて調べたところ、そうではないことを知った。
正直、嬉しかった。
漫画と言えば、手塚治虫先生のおかげで日本で爆発的に広まり、独自に進化していった文化だった。
それがいつしか世界中で読まれるようになり、ついに、世界中で描かれるようになってきたのだ。
これから、漫画はどんどん面白くなっていく予感がある。

さて、XOYの中でもコリアン系の作家さんはかなり多く見られるのだけれども、特にsoonkki氏の「Cheese in the Trap」は面白い。
既に韓国では映像化もされたようで、そこそこ人気があるようだ。

xoy.webtoons.com

とにかく、登場人物がきれいにまとまっていなくて良い。
みんなそれぞれ闇を抱えていて、それを惜しげもなく披露してくれる。
クズがどこまでいっても潔いくらいにクズで、それこそ韓流作品らしく、劇的な展開でもって人間関係をかき乱す。
感情の動きや所作、背景、小道具などの端々でカルチャーギャップが感じられるのも良い。
たぶん、「彼氏彼女の事情」が好きだった人にはたまらないストーリーだと思う。
もしかすると、作者自身が影響を受けているかもしれない。
既に250話を超えて連載されていて、僕はこの作品に二晩ほど捧げた。
この他にも、コリアン系に限定しなければ、「Super Secret」など絵を見ているだけでも楽しい作品もあって、これからどんどんと広まっていくと思われる。

 

ここまで、最近になってコリアン文化との繋がりを意識したものに限定して集めてみた。
ただ、韓流ブームが吹き荒れていた時も、韓国映画には興味を持って観ていたし、2ne1は楽曲もファッションもTLCを彷彿とさせるので注目していた。
一応述べておくと、僕は、別に韓国や北朝鮮という国や民族を持ち上げる意図はまるでない。
むしろ向こうの政府については、疑念を抱くことが多いくらいだ。
だけれども、折角、インターネットのおかげで世界中の文化に触れられる状況なのだから、つまらないことは気にせずに楽しむべきだと思うのだ。

昨年亡くなってしまったが、キューバの指導者であったカストロ氏が、かつて何かのインタビューで「アメリカという国には抵抗するけれどもアメリカ人は決して嫌いではない」と答えていた。
国家間の問題と国民の間の感情は当然違っていて然るべきだ。
国どうしで摩擦が起きていたとしても、人的・文化的交流を途絶えさせてはいけない。
最も良くないのは、繋がりを絶って互いに意思疎通できなくなることだ。
これからも、気の向くままに世界中の文化を楽しんでいきたい。