童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

星野源はウナギになった

昨夜、おげんさん(星野源)がゲストのSONGSを観ていた。

www6.nhk.or.jpおげんさんとは、5月に一回だけ放送された生放送番組「おげんさんといっしょ」のキャラクターで、星野さんの新曲「Family Song」のMVにも登場する素敵なお母さんだ。


星野 源 - Family Song 【MUSIC VIDEO & 特典DVD予告編】

ただ、メイクのせいなのか、久しぶりに観たおげんさんはやけに疲れて見えて、以前見た姿より10歳くらい老けていた。
もちろん番組そのものは大変面白かったのだけれども、段々と謎の不安感に襲われてきて、素直に楽しめなくなっていることに気が付いた。
これは一体どういうことなのか。
そのことについて考えてみた。

 

僕が最初に星野源という男を認識したのは、2011年放送のクドカン脚本ドラマ「11人もいる!」だった。
田辺誠一さん演じる生活能力はないけど生殖能力はずば抜けているダメダメお父さんの弟、辛気臭い&幸薄そうなヒロユキおじさんを好演していた。
このドラマでは、時折ヒロユキおじさんの弾き語りフレーズが挟まれる。
それを観ながら、この星野源という人は演技も面白いくせにギターも弾けて歌える、なんてずるい人だろう、と思ったのを覚えている。
そんなことを思っていたら、あれよあれよと売れてゆき、おととし暮れの「Yellow Dancer」で一気に勢いを得た後は、去年の「逃げ恥」が決定打となり、もはや国民的と言って良いほどの人気者になってしまった。

売れてしまって良くあるのが、忙しくなりすぎて仕事が雑になる、あるいは大衆に迎合してスタイルが軟化する、といったパターンだ。
しかし、彼の場合、あまりそれが見られない。
むしろ、売れた分、以前より更に一つ一つの仕事の丁寧さが増している気さえする。
音楽面で言えば、楽曲へのこだわりはもちろん、シングルCDに異常な位の特典映像を付けたり、ダンスを踊ってみたり…
一体、どれくらいの時間と努力を重ねてこれを維持しているのか。
ある部分では、彼自身、自分の面白さを世間が認めてくれている状況が嬉しいのだろう。
でも、それにしたって凄い。

音楽家、俳優、文筆家、ラジオパーソナリティ
とにかく幅広い分野で活躍していて、おそらく今は想像を絶する過密スケジュールをこなしていると思われる。
徐々に認知され始めた2012年の暮れ、彼はくも膜下出血で一度倒れている。
最近では、昨年9月に、過労で体調を崩し、パーソナリティを務めるオールナイトニッポンを急遽Perfumeに代わってもらう、なんてこともあった。
ラジオでは、源さんが疲れているから「元気の出るメール」を募る、というのが半ば恒例化している。

何が言いたいかというと、売れて多くの人に必要とされているのはファンとしても嬉しいし分かるけれども、不安なのだ。
彼の命を削ってしまっているのではないか。
昨夜、数万のお客さんの前で歌い踊る彼を観ている内に、徐々に楽しさが薄らいで言いようのない不安に襲われた原因は、おそらくこれなのだ。

 

そして、ここまで考えて気が付いた。
この気持ちは、ウナギに対する気持ちと同じだ、と。

僕はウナギが大好きで、年に数回は必ず食べる。
昔、家族で良く行っていた諏訪湖のほとりの鰻屋へは、今でも正月明け位に都合が合えば諏訪大社への初詣ついでに行っている。
現在住んでいるエリアでも、最近美味しい鰻屋を開拓して、友人が来たりすると一緒に行っている。

ウナギそのものは昔も今も変わらなかったはずで、いつしかその美味しさが発見され、日本ではずっとかば焼きという形で親しまれ続けている。
戦後豊かになるとともに一気に大衆化して、今や土用の丑の日になると牛丼屋やスーパーでも見かけるようになった。
ウナギが好物の消費者にとって、大量消費の時代は都合が良い。
美味しいウナギを手ごろな値段で食べられるのだから。

ところがその一方で、当然のことながら、ウナギは数を減らしていく。
ご存知の通り、今やウナギは、絶滅が心配され、年々漁獲量が減っている魚である。
生態も掴めていないことが多く、完全な養殖はいまだ実現していない。
むやみに食べ過ぎてしまうと、彼らは永遠にいなくなってしまうのだ。

 

どうだろうか。
大衆化、大量消費による絶滅危機、変わらない美味しさ。
星野源さんの姿と重ならないだろうか。

もはや、星野源という人は、僕の中で、ウナギと同じカテゴリーに入っている。
僕は、ウナギを存続させるために、ウナギは高くあるべきだと考えている。
鰻屋さんに行って、最低3000円は払って食べるべきものなのだ。
だから、星野さんも一緒だと思う。
ダウンロードで「恋」だけ落とすなんていう安い消費の仕方はダメなのだ。
ちゃんとシングルやアルバムを盤で買い、映画を映画館に観に行き、本を買い、ラジオを聞く。
そして、その一つ一つのありがたみを噛み締めなければ。
高いお金を払って、鰻重をありがたく頂くように。

 

星野さんの熱狂的なファンからは殺されそうな記事を書いてしまった。
Perfume FESの星野さんとの対バンのチケが星野さん人気で全く取れなかったことの恨みの気持ちが、半分くらい入っていたことをここに告白しておく。
それから、昨夜Twitterを覗いていたら、マリンバを叩く星野さんの姿に驚いている人がいて、ちょっとだけ「ニワカが…」と思ったことも告白しておく。
ぬるいファンのくせに古参気取りで、とても恥知らずなことは分かっているが、反省の気持ちも込めて記事に残しておくことにした。