童貞見聞録

アラサーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

寄席のまとめ

初めて寄席に足を踏み入れてから、もう6年位経っただろうか。
通い始めた頃は東京で学生をしていたため、近所に4軒も常打小屋(定席)があるという大変恵まれた環境にあった。
就職してからはかつてほど行けなくなってしまったが、それでも、折をみて同僚や友人を誘いつつ門を潜っている。

テレビ(特に笑点)のおかげで、落語を聴いたことのある人は多い。
しかし、寄席で落語を観たことのある人はどれ位いるだろうか。
何でもそうだが、生で体験するものはテレビ・ラジオと伝わり方がまるで違う。
演者と客の共感を大切にする芸術である分、落語は「生」のときに最も輝く気がしている。
それに、寄席は作法も少なく客の楽しみ方に自由度があるので、他の伝統芸能(能とか狂言とか)に比べて堅苦しさがない。
前知識もほとんど必要ない(あった方が良いが)。
日本語を解する人間であるならば、誰でも楽しむことができるはずだ。

この記事では、都内の常打小屋4軒を紹介したい。
半分は布教のため、半分は自分のためだ。
4軒それぞれに特徴があるので、この機会に情報をまとめておきたい。

 

 

各寄席の紹介に入る前に、全てに共通することで、重要なことをまとめておく。

まず、寄席は遅刻早退OKである。
基本的にいつ入っても良いし、いつ出ても構わない。
マナーとして高座の途中で出入りするのは避けた方が良いけれども、ちょっと売店にお土産を買いに出たり、トイレに行ったり、比較的自由にできる。
ただし、寄席自体の再入場は禁止されているところもあるので注意が必要だ。

次に、寄席は飲食自由である。
音や匂いの出るものや、周りを汚すものは避けた方が良いが、基本的には何でも食べて構わない(ただし、アルコールは禁止されているところあり)。
とある噺家さんによれば、かつては買ってきた刺身を食べ始めたお客さんもいるとか。

そして、当然服装規定もない。
フォーマルな恰好や和装をする必要はまるでない。
スーツでもジャージでも、公道で捕まらないものなら何でもOKだ。
ただ、変わった服を着ていると、噺家さんにいじられたりもする。
また、一部の寄席では着物を着ていると割引になる場合もある。

既に敷居は大分下がったのではないだろうか。
年中無休なので、ドタキャンされて予定が吹っ飛んだ日や思いのほか予定が早く済んだ日など、思い立った時に直ぐに入れるところも魅力だ。
人気の大師匠がトリを務めるときでもない限り、満席ということもない。
落語ばかり聴かされると思いきや、色物と呼ばれる大道芸やマジック、漫才、ものまねが挟まって飽きさせない工夫がされている。
どこに入っても間違いなく楽しめるはずなので、是非とも一度足を運んでもらいたい。

1.浅草演芸ホール

浅草演芸ホール

www.asakusaengei.com

その名の通り浅草に位置する寄席で、雷門から浅草寺に向かって歩いたときに、浅草寺の手前で左に曲がってまっすぐ行った先にある。
実はつくばエクスプレスの浅草駅とはほとんどくっついていて、雨の時などはそちらからが便利だ。

このホールは座席数300程度とそこそこ大きいものの、舞台が近いために良い意味で広さを感じさせない。
浅草という風土もあってか噺家さんとの間の距離が近い印象がある。
料金は通常大人2800円だが、夜には割引があって18時以降2300円、19時以降1800円となる。
当日券のみで予約はなし。
昼夜入れ替えもないので、昼の部が始まる12時頃から夜の大トリが終わる21時頃までずっと居座ることができる。
ホール近くの日之出煎餅でお菓子を買い、お茶かお酒(アルコールOK)とともに入場するのがお薦めだ。
天丼屋やそば屋、下町らしい居酒屋など、落語を聴いた後にピッタリのロケーションに囲まれているので、一日浸ることができる。
ホームページもきちんと作られていて、日ごとの演者も見やすくなっているので、一度アクセスしてみて欲しい。

浅草演芸ホールでは、係のお兄さん(多分前座の芸人さん)に優しくされたことを思い出す。
その日は、合羽橋でしこたま買い物をした後に、夜の部の最後まで居たのだったと思う。
帰る途中、食器やらポットやらを丸ごと席に忘れていたことに気づいて、駅から慌てて戻ったのだが、当然既にホールは閉まっている…
それでも中で作業をしている風だったので、何とかお兄さんを捕まえて事情を話したところ、丁寧に保管してくれていて全て壊れずに戻ってきた。
この前座さん、推せる!と思ったが、名前を伺うこともできず、暗くて顔もはっきりしなかったため、とりあえず小太りの前座さんは全員推すことにしている。

 

2.池袋演芸場

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www.ike-en.com

池袋の西口を出て、ちょっといかがわしいエリアの入り口くらいのところにある。
地下に劇場があるため、1階でチケットを買ったら薄暗い階段を降りていくことになる。
ちょっと秘密倶楽部めいていてドキドキする。

座席数100席弱という圧倒的な狭さ。
後ろの方の座席でも芸人さんのかく汗まで観ることができて、都内では最も「生」感を味わえる寄席だろう。
料金も基本大人2500円と少し低めで、浴衣・着物割引などがある。
また、学生だと2000円で入れるところも嬉しい。
ホームページには書かれていないが、前売り券が売られていたはずだ。
夏に人間国宝小三治師匠が昼の部のトリを務めるのだが、そういうときの週末は前売り券を持っていても立ち見になることがある。
こじんまりしているせいか、全体的に地味と言うか質素と言うか、派手さがまるでないところがとても良い。
浅草に比べるとホームページも簡素で、お金をかけていない感じが素晴らしい。

寄席では、基本的に1月が10日ごとに上席、中席、下席と分けられていて、その10日間は同じ演者が毎日高座へ上がる。
ただ、池袋では、下席・夜の部が日替わり特選会(親子会や二つ目勉強会など)となっていて、通常の寄席では聴けない長めの噺などを楽しめるようになっている。
上席・中席では昼夜入れ替えなしだが、下席だけ入れ替えあり。
料金も下席は昼の部2000円で、夜は日毎に変更される。

僕が落語というか寄席にハマったきっかけの場所なので思い入れが強い。
ジュンク堂書店新文芸坐と肩を並べる超個人的三大池袋プレイスポットの一つだ。
いつものスタイルとしては、東武百貨店で和菓子を買い、西口の下にあるビアードパパでシュークリームを買い、おまけに演芸場前のコンビニで飲み物を仕入れて入る。
終わった後は池袋の中華の名店「永利」でたらふく食って帰る、と。
最高の週末の過ごし方である。

 

3.新宿末廣亭

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/dd/Shinjuku_Suehirotei-1.jpg

新宿末廣亭

新宿三丁目に位置する寄席で、飲み屋街の一角に建っているので、見たことのある人も多いだろう。
伊勢丹から明治通りを挟んで向かい側の路地を入った裏手にある。
地下通路で言うとB2出口から向かうのが良い。

座席数は300席強。
写真を見てもらっても分かるように、いわゆる「寄席」らしい寄席である。
特に目を引くのは両脇に設けられた桟敷席で、靴を脱いで胡坐をかいたり膝を立てたり自由に高座を楽しむことができる。
落語を余り知らない人を連れていく場合は、新宿というアクセスの良さ、寄席らしい雰囲気が味わえる、ということで喜ばれやすい。
実際、修学旅行生が集団で来ていることも多い。
料金は一般3000円と少しお高め。
ただ、内装は他では味わえないものがあるし、常に昼夜入れ替えなしというのも嬉しい。
また、土曜は深夜寄席という特別番組が組まれていて、21:30から1000円という格安でたっぷり楽しむことができる。

どの寄席も大体飲み屋街の中に位置しているために、終演後の展開に困ることはないが、特に新宿は良いと思う。
新宿三丁目の飲み屋はとにかく外れがない気がする。
新宿なので遅くなっても帰るのに困らない。
それに、新宿はバスタができてからは、地方に行くときの起点としても大変便利になった。
例えば東京出張終わりの余り時間に落語を楽しんで近くで一杯(ちなみに寄席では飲酒禁止)。
ほろ酔いで夜行バス、というのも乙ではないだろうか。

 

4.鈴本演芸場

 

鈴本演芸場

上野と御徒町のちょうど中間位、上野広小路から不忍池方面に歩いて左手にある演芸場。
建物にあまり特徴がなくて入り口も少し奥まっているが、大抵のぼりが立っているのでそれを目印にすると良い。

座席数は300弱と浅草や新宿に比べて若干少ないものの、天井が割と高いせいか広々とした印象がある。
内装は演芸場というより市民ホールの感じに近い。
料金は通常2800円で学生が2500円。
ただ、この学生料金が曲者で、年齢制限があるために25歳以上になると適用されない。
このおかげで博士課程の学生だった時に悔しい思いをさせられた(その当時は2400円だった)。
また、昼夜入れ替えがあるため、他の寄席のように昼の部から居座ることはできない。
写真でも右上に見えているが、入り口の寄席太鼓が目を引く。
開場とともに叩かれる一番太鼓や終演後のハネ太鼓など、実際にその場で叩いているのが見られる。
舞台に向かって左側の最後方に2席だけ並んだ列があり、ホームページによればラブシートと呼ぶそうだ。
カップルで座れるからということなのだろうが、少なくとも僕はそんなロマンティックな使われ方をしているところを見たことはない。
こちらはアルコールOK、寄席の中でも購入できる。
また、今回調べて初めて知ったのだが、神田志乃多寿司のお弁当が買えるらしい。
志乃多の稲荷寿司は大好物なので、今度行ったときは必ず買おうと思う。

大学がそこそこ近かったこともあって、学生当時に良く通った。
当時お世話になっていた助教の方が朝ドラ「ちりとてちん」のファンで、一度寄席に行きたいということでお連れしたこともあった。
落語そのものも大変喜んでもらえたのだが、それ以上に紙切りに痛く感動されていたのが印象に残っている。
その場でお題を募って何でも切ってプレゼント、というのは確かに楽しい。
紙切り芸人さんの数はかなり少ないはずなので、絶滅危惧種保護のためにも見たことがない方は是非行かれると良いと思う。
皆さん素晴らしいが、個人的にはやはり林家正楽師匠の神業(紙業)がお薦めだ。
以前「あまちゃん」というお題に悩みながらも、見事に海女さんが海からウニを差し出している姿を見事に切りきっていた。

 

最後に

ここまでつらつらと4軒の定席について情報を書いてきた。
この中でもお薦めを決めるなら、と考えてみたが、四者四様の良さがあるのでなかなか悩ましい。
ただ、やはり落語そのものを楽しみたいなら「池袋演芸場」を推したい。
あの近さ・狭さからくる臨場感は、他の寄席では絶対に味わえない。
一方で落語そのものにはそんなに興味は…という方は「新宿末廣亭」が良いだろう。
建物そのものが観光目的に適している。
もちろん、定席以外に、小さいハコで落語会が行われていることも少なくない。
渋谷のユーロライブでは、初心者でも楽しめる落語会としてシブラクというイベントも定期的に開催されている。
こうした落語会の方が、噺をじっくり聴くことができる、という利点もある(寄席では長い噺が短く省略されることが多い)。

このブログに大した影響力はないけれども、誰かが寄席に足を踏み入れるきっかけになれたら、こんなに嬉しいことはない。