童貞見聞録

アラサーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

レンタルおじさん

最近、レンタルおじさんの真似事をしている。

レンタルおじさんと聞いてピンとくる人は、きっと同じドラマを観ていたと思われる。
2016年春に放送されていた日本テレビ系ドラマ「ゆとりですがなにか」だ。

#1

ドラマの内容には触れないが、このドラマは、「レンタルおじさん」と呼ばれるサービスを主人公が利用するところから始まる。
要するに、お金を払って見ず知らずのおじさんに悩みを聞いてもらう、というものだ。

ドラマのレンタルおじさん(吉田鋼太郎さん)ほど、風格も落ち着きも威厳も知識もないため、お金を頂くことはしていないが、ひょんなことからほぼ見ず知らずの方の身の上話を聞かされるという事態に陥っている。
ことの顛末をまとめておきたい。

 

利用者の方(女性)とは、全くの初対面というわけではなく、とある学会の飲み会で一度会っている。
後輩の紹介で少し話をして、割と気が合うな、という程度だった。
SNSのアカウントだけ交換して、互いの呟きは見つつも、それから全く交流はなかった。

事態が動いたのは年明け位だったろうか。
いつの間にか共通の知り合いである後輩と彼女の間の相互フォローが解消され、互いが互いを罵り合っている風な呟きが見え始めたのだ。
何となく「ああ、付き合ってて別れたのかな」位に思って、性格の悪い僕は、どちらもこのままフォローし続けようと固く心に決めたのを覚えている。
それからしばらく経ったある土曜の朝、自分のアカウントにDMが届いていることに気が付いた。
何と利用者さんからで、全く別の方に送ろうとしていたであろう誤爆メッセージだった。
本人が慌てて謝罪の連絡を寄越したところから会話が始まり、しばらくしたところで彼女の方から「相談したいことがあるので電話しても良いか」と言ってきた。
ここから約3時間、僕はたった一度しか会ったことのない妙齢の女性から、奇妙な身の上話を聞かされることになったのだ。

 

身の上話を細かく述べることは避けるが、要するに、極度の依存体質で頼れそうな相手には次々頼ってしまう性格のようだった。
件の後輩とも、悩みを聞いてもらったりしている内に告白され、付き合えないと答えつつずるずるやり取りを続けていたところ、一方的にキレられたらしい。
しかも、どうもこの後輩だけでなく、似た状況になっている男が後二人いるらしい。
その上、元カレとも切れていないと言う。
なるほど、だから「アイツは尻軽」みたいなことを呟いていたのか。
(とは言え、振られて悪口をSNSに吐き出す後輩氏の器の小ささにも大きな問題がある)

言葉は悪いが、典型的な受動的ヤリマンである。
今までもそれらしき人から話を聞く機会はあったし、自分自身も(男だけど)割とそのタイプだと思っていた。
が、彼女に比べれば大したことはない。
周りに翻弄されて人間関係を全く整理できないタイプ。
聞けば、夜道を歩けば変質者に追いかけられ、電車に乗れば痴漢に遭い、研究室でも信頼していた先輩から性的な嫌がらせを受けたらしい。
どれも完全に相手が悪いのだが、おそらく彼女は日常生活からして隙だらけなのだろう。
そもそも、一度しか会ったことのない男に急にこんな身の上話をしてしまう時点で無防備すぎる。

 

そんな話を聞きながら、僕は、こういうタイプの女性のレンタルおじさんとしては最適ではないか、と考えていた。
何故なら、僕はほぼ無性愛者なので、弱みを見せられたところで絶対に相手を好きにならない。
加えて、自身に受動的ヤリマン成分があるので共感もできる。
具体的に助けてもらうというよりも、ただ話を聞いてもらって頷いて欲しいようだったし、その点においてはまさに適任である。
対して僕はと言えば、話を聞きながらメモを取り、SNSで相手の男を調べ、言い方は悪いが結構楽しんでしまっていた。
まさにウィンウィン。

 

向こうも味を占めたのか、その後も電話やメッセージのやり取りがあって、色々な話を聞くことができた。
兄弟の中で自分だけ両親からあまり愛されなかったこと。
元カレのDVと暴言、それでもまだ好きなこと。
ダメ男じゃないと好きにならないこと。
鬱を発症して休職中であること。
話を聞いていて「こんなこと起きてないよね?」と聞くと「なんで分かるんですか?」と驚かれてそのエピソードが出てくるという。
本当に、教科書に載せたいレベルの典型的な「弱い女性」であった。 

ところが、実はここ一か月ほど、彼女からの連絡が途絶えている。
SNSを見る限り、ようやく元カレとも切れて、それなりに充実した日々を送っているようだ。
レンタルおじさんとしては、元気にやってくれているなら、何も言うことはない。
むしろ、自分のそんな適性に気付かせてくれて感謝している(役に立つかどうかは不明)。
とは言え、きっとまた、躁から鬱へ移った時に連絡が来るような気もしている。
その時には、これまで通り、ちょっと面白がりながら相槌を打つことになるだろう。