童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2018年上半期の個人的ヘビロテ音楽備忘録

もう7月も終わろうとしているので上半期でもないのだが、一応メモ代わりに残しておく。
実はこの音楽をまとめる記事、実際に時折読み直していて文字通り「備忘録」として機能している。
その頃の心理状況も併せて蘇るので、結構助かっている。

今年は4月に仕事が少し変わってから圧倒的に忙しくなってしまい、実感としては去年に比べてあまり音楽を聴けていない。
歌詞カードをみながらヘッドホンでじっくりと楽しむ時間を取りたいのが、なかなかできていないのが残念だ。
それでも、幾つか良い出会いや再会があった。

「G I R L」Pharrell Williams

また今更と言われそうな2014年の名盤だ。

GIRL

元々Pharrellは、高校生くらいの頃にN.E.R.DやThe Neptunesで知っていた。
音が凄く好きだなとは思いつつCDを買うまではいっていなかったのだが、他のアーティストの好きな楽曲に彼の作品が多いことに気が付いた。
例えば、Britney Spearsの「I'm Slave 4 U」やTLCの「In Your Arms Tonight」、Gwen Stefaniの「Hollaback Girl」など。
独特の汗臭さや気怠さが癖になって、絶対このPharrellという人物はエロいに違いないと思っていた。

時は経って数年前、YouTubeを中心に「Happy」が大流行した。
彼の名曲に合わせて、世界中の人たちが自分達のビデオを撮り始めたのだ。

www.youtube.com各国各地方、様々なビデオが撮られて公開されていたが、特にイスラム圏に受容されていったのが面白かった。
上のガザ地区のビデオ然り、各国のムスリムたちのビデオも数多く公開されている。
音楽が、YouTubeというメディアを通して世界を繋げる瞬間を目撃するという、結構感動的な出来事として印象に残っている。
この曲の普遍性や親しみやすさが果たした役割は大きい。

「Happy」の他、盟友Justin Tinberlakeが参加した「Brand New」など、粒ぞろいで余すところなく楽しめる一枚だった。
全10曲とすっきり終わるところも良い。
Bluno Marsのおかげか世界中でファンクが再びブームになっている気がするが、彼の音楽にはずっと前から継続してその匂いがあった。
僕の中でファンクは体をくねらせる音楽という定義なのだけど、この一枚はまさにそんな感じ。
多分これからもずっと聴き続けると思う。


Pharrell Williams - Brand New Ft. Justin Timberlake (Official Video )

「レポート」Official髭男dism

今年は、Official髭男dismが大躍進を遂げた1年だった。
と、1年が終わる前に言いたくなるほどに活躍の機会が増えた気がする。
「関ジャム完全燃SHOW」にて蔦谷好位置さんが「Tell Me Baby」を紹介した辺りをきっかけに人気が広がり、メジャーデビュー曲「ノーダウト」がいきなり月9ドラマの主題歌に起用される大出世を遂げた。

レポート 通常版

「レポート」は去年出たミニアルバムで、新人らしい勢いとオリジナリティに溢れる1枚で春頃良く聴いていた。
ボーカル藤原さんが、スガシカオ氏のような、天性のファンキーさを持った声質をしている。
それでいて高温に不思議な爽快感と疾走感があって、エロいのに爽やかみたいな、ファンクなのにパンクロックみたいな、ダンディなのに中学生男子みたいな、不思議な印象を残す。
あと、関係ないが、満島ひかりさんに似ている。

何より個人的に気に入ったのは、歌詞の譜割りの素晴らしさである。


Official髭男dism - 犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう![Official Video]

タイトルを見て、何故猫ではなくキャット?と思うかもしれない。
でも曲を聴いてみれば、もしくは口ずさんでみればわかるはず。
このメロディ、このリズムには、このフレーズ以外にあり得ない。
一字一句変えてはならない。
この一曲は、まるごと全部こんな感じで譜割りが完璧なのだ。
しかもメロディもポップでキャッチー。
見て分かる通りタイトルもフックが効いている。
CDがまだまだ売れていた時代に広告展開をうまくしていたなら、この曲をきっかけに爆発的な人気を得ていたような気がする。

「Digital Native」中田ヤスタカ

Digital Native(通常盤)

彼は、僕にとって神様のような人なので、その音楽の前では冷静な判断力を失っている可能性がある。
流石にどの曲も同じ程度に好きということはないが、一曲として、この曲はつまらないと思ったことがない。
それが、彼の音楽が素晴らしいからなのか、僕が盲目的なファンになっているからなのか、あるいはその両方なのか、もう良く分からなくなっている。

最近の中田さんは、Perfumeの「if you wanna」以降に顕著なようにfuture bassにご執心である。
このアルバムは、そんな中田印のfuture bassの見本市のような一枚になっている。
「Love Don't Lie」、「Jump in Tonight」、「Level Up」…
中でも「Level Up」はかなりハードに作りこんでいて、聴いていると体ごと振り回されるような錯覚に襲われる。
その一方で「Wire Frame Baby」みたいな、シンセが気持ちいいちょっとアンニュイなグルーヴも冴えていて飽きがこない。
様々なアーティストを迎えての1枚であるが、Perfumeの大ファンとしては、やはり中田ヤスタカ(feat. Perfume)が聴きたいところ。
Perfume名義では、かなり「Perfume」を意識したトラック作りをしていると思うので、是非、完全に素材として彼女たちの声を使った場合にどうなるのか、とても気になっている。

Level Up (feat. banvox)

Level Up (feat. banvox)

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Wire Frame Baby (feat. MAMIKO[chelmico])

Wire Frame Baby (feat. MAMIKO[chelmico])

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「Hi-Fi POPS」ORESAMA

ORESAMAのことを知ったのは、数年前アニメの主題歌になっていた「オオカミハート」だった。


【MV】 ORESAMA - オオカミハート (F.O.ver.)

キラキラエレクトロとディスコサウンドが融合して、有無を言わせぬポップさがある。
加えてちょっと懐かしい昔のりぼん感のあるアートワークも良くて、気になるアーティストになっていた。
さらに、楽曲を作っている小島英也氏が参加したDAOKOの「さみしいかみさま」も抜群に良くて、アルバムが出たら是非買おうと思っていた。

Hi-Fi POPS(通常盤)

アニメ主題歌や広告とのコラボが多いアルバムではあるが、彼らの魅力を存分に楽しめる一枚になっている。
最近はまたディスコブームが来ているし、今後さらに活躍の場が広がるのではないかと思っている。
PON氏の声が、何と言うかテルミンのようなちょっと人間離れした独特の響きを持っていて、それが打ち込み系の音と良く合っている。
歌い手として抜群のテクニックを持っているからか、声は浮き立つような印象があるのに複雑なメロディでも安定感がある。
リメイク版「魔法陣グルグル」の主題歌にもなっていた「流星ダンスフロア」、メロウで落ち着いた「耳もとでつかまえて」。
楽曲の幅もあってとても楽しかった。

流星ダンスフロア

流星ダンスフロア

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耳もとでつかまえて

耳もとでつかまえて

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この記事を書くに当たって調べて驚いたのだが、一時期馬鹿みたいに聴いていたONE III NOTES(アニメ「ACCA13区監察課」のために集められたスペシャルユニット)の「Shadow and Truth」。
ボーカルがPON氏だったことを今更知った。びっくり。
ずっと好きだったんだなあ。

Shadow and Truth

Shadow and Truth

  • ONE Ⅲ NOTES
  • アニメ
  • ¥250
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「PINK」CHAI

Pink

彼女たちを知ったきっかけは忘れてしまったが、他の方のブログやネット記事などでも割と頻繁に名前の挙がるバンドだと思う。
そして多くの方が指摘するように、まず「N.E.O.」を聴いて良く分かった。
彼は大変に気持ちの良いバンドだ。
そして、実際に演奏をしているところを観てさらに好きになった。
彼女たちは楽しそうに世界と戦っている。


CHAI - N.E.O. [YouTube Music Sessions]

そしてアルバムが既に出ているのを知って早速買って聴いてみた。
女の子にかけられた呪いを解くための戦う歌が目を引くけれども、落ち着いたナンバーもすこぶる良い。
中でも「ほれちゃった」は、かなりの名曲だと思う。
何かを好きになった不安と喜び、優しい気持ちが、水餃子鍋のような温かくて旨味たっぷりのトラックに閉じ込められている。


CHAI『ほれちゃった』Official Music Video

「分離派の夏」小袋成彬

このアルバムに関しては、既に別の記事にまとめている。

tamago-polo.hatenablog.com

それにしても、今年は小袋氏と宇多田氏のタッグに数多く出会っている。
本作の「Lonely One」は勿論、椎名林檎トリビュートアルバム「アダムとイヴの林檎」の「丸の内サディスティック」でのデュエット、そして後述する宇多田さんの「初恋」での「パクチーの唄」。
いずれも内省的で抑制的な二人のスタンスが気持ちよく共鳴していて、凄く楽しませてもらった。


宇多田ヒカル&小袋成彬 - 丸ノ内サディスティック(椎名林檎トリビュート・アルバム『アダムとイヴの林檎』より)

二人とも夏がテーマになったアルバムになっていて、まさに今年上半期を象徴する二人だったと思っている。
上の記事にも書いた気がするが、師弟とか姉弟とか友人とか、二人の関係をどう表現したら適切なのか迷ってしまう。
凄く似ているのに、どちらも個が確立していて遠い。
同志とかソウルメイトとか、そういうものなのかも知れない。

「The Time Is Now」Craig David

The Time Is Now (Deluxe)

Craig Davidを聴いたのは何年振りだろう。
高校生くらいの頃は、彼のデビューアルバム「Born To Do It」を持っていて良く聴いていた。
当時R&Bの男性ソロアーティストは何人かいたけれども、その中でもあまりマッチョな感じがせず、どちらかと言うとUKらしいインテリっぽい雰囲気が好きだった。
マイナーコードで躍らせてくるツーステップも当時の僕には新鮮で、代表曲「Fill Me In」を何度も何度も聴いていた。
が、大学進学以降、何故かあまり聞かなくなってしまっていた。


Fill Me In

ところが、先日海外出張から帰る飛行機の中で、機内音楽を聴こうとプレーヤーを操作していたところ、彼の直近のアルバム「The Time In Now」が入っていることに気が付いた。
懐かしいと思いつつ聴いてみて、一曲目の「Magic」で一気に惚れ直してしまった。
トロピカルハウスは最近の流行り(というかちょっと終わりかけ)だけれども、それと彼を合わせようと思った人は天才だろう(本人かも知れないけど)。
確かに、彼のリズム感と声質は、夕焼けを思わせるちょっとセンチメンタルなトロピカルハウスにピッタリだ。
落語でいうところの「フラ」というか、人好きのする愛嬌顔は相変わらずで、素晴らしい歳の取り方をしていると嬉しくなってしまった。
調べてみるとつい2年ほど前に大復活というか再度注目を集めていたらしい。
全然知らなかった。悔しい。


Craig David - Magic (Official Video) ft. Yxng Bane

「初恋」宇多田ヒカル

このアルバムについては、また改めて記事を書きたいと思っている。
おそらく、相当の番狂わせがない限り、今年最も好きなアルバムになるだろう。
という位に心揺さぶられる一枚だった。

初恋

前にも記事にしたように、僕は詩人としての彼女の素晴らしさに、いつもいつも感激させられている。
今回もそうで、一曲目の「Play A Love Song」の1フレーズだけでいきなり救われた気持ちにさせられてしまった。

友達の心配や 生い立ちのトラウマは
まだ続く僕たちの歴史の ほんの通釈

どうして僕の求める言葉が、そのままここに書いてあるのか。
というか、この歌は僕のために作られたのではないか。
などと気持ちの悪いことを考えていたのだけれども、先日放送されたSONGSでの彼女の言葉を聴いて驚いた。
彼女は、彼女の作る音楽のリスナーとして、部屋で一人ヘッドホンで聴いてる「誰か」を意識している、というようなことを話していて、まさに自分だと思ってしまった。
おそらく同じことを考えた人間が万単位でいるだろうけれども。

Play A Love Song

Play A Love Song

  • provided courtesy of iTunes

できれば一曲一曲語りたくなってしまうのだが取り留めがなくなるので、あと一曲だけ、「あなた」についても書いておきたい。
映画の主題歌にもなっていたし、耳にする機会も比較的多かった。
シングルとして発表された時からダウンロードして聴いていたので良く知っていたはずなのだが、改めて歌詞カードを読んで驚かされた。

この歌のサビの最後は以下のようなフレーズがある。

代り映えしない明日をください

 一方で、曲の最後の部分でこんな風にも歌っている。

終わりのない苦しみを甘受し
Darling 旅を続けよう

つまり、求めている代わり映えしない暮らしは、決して苦しみの無い世界ではなく、それをも含んだ日々の営みのことを指している。
この視点こそ、まさに宇多田ヒカル的であり、僕が強くシンパシーを感じる部分だ。
幸せであることと苦しみは、決して矛盾しない。
やはり、僕は彼女の綴る詩がたまらなく好きだ。


宇多田ヒカル 『あなた』(Short Version)