童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

惚気話の料理法

少し前に、同僚が結婚した。

相手は同じ研究室の後輩とのことで、この業界の良くあるパターンだ。
西の方の大学出身で、その彼女も修士号をとった後にそっちで就職。
しばらくは遠距離で付き合っていたところ、彼女の関東圏での転職が決まり、良い機会なので籍を入れた、ということだった。
何から何までそつなくこなす彼らしい、非常に明快な結婚の理由であった。

同僚として勤め始めてから2年強、特に最初の一年は同じプロジェクトに携わっていたこともあって、彼と話す機会は多かった。
その中で、当然、交際中の話も聞いていたし、互いの両親への挨拶やら新居選びやら式の準備やら、段々と忙しくなっていくのを全く参考にする予定もないのにふんふんと相槌を打っていた。

世間的には嫌がられるのかも知れないが、僕は、いわゆる惚気話にそれほど抵抗はない。
もちろん四六時中そんな話をされていたら辟易するかも知れないが、昨日こんなことを話したとか相手のこんな部分が好きだとかって話は、結構面白いと思う方なのだ。
彼は割とそういうことも話してくれるので、いつも楽しませてもらっていた。

 

ある日、彼からいつものように惚気に近い話を聞いていた時に、とある遊びを発見してしまった。
遊びというよりもコツだろうか。
そのコツをおさえると、何と、ただの惚気話が2倍も3倍も面白くなるのだ。
個人的には、かなり画期的なライフハックだと思っているので、ここにまとめておこうと思う。

 

きっかけは、惚気話を聞かせてくれる同僚が、頑なに相手と会わせてくれないことだった。

僕の勤め先は、割とスタッフの仲が良く、花見とかバーベキューとか流しそうめんとかスキーとか、とにかくイベントが多い。
そういうタイミングには、それぞれのスタッフが家族を連れてくることももちろん多い。
ところが、彼はそういうイベントに相手を連れてきたことがない。
何なら、ちょっと連れてくるのを嫌そうにしている位だ。
彼自身はイベントに来るし、むしろイベントを楽しみにしているようなのだが。

 

そこで、とある仮説を思いついたのだ。
もしかしてその彼女、存在していないのでは、と。

 

この仮説に基づいて彼の話を聞くと、まるでサイコパスと会話しているような気持ちになってくるのだ。

「彼女が家の中で良く物を失くすんだけど、〇〇どこにあるか知ってる?って聞かれて知らないって答えると必ず、知れ!!って言われるのが可愛い」

「近所のスポーツチームに参加してて、この間の日曜に大会があったんだけど応援しに来てくれた」

「昔撮った浴衣の彼女の写真、良く撮れたから部屋に飾ってる」

全部、実は相手が実在しないと思うと、何とも言えない切なさがこみ上げてくる。
そもそもこの前提に立つと、相手の親に挨拶に行くのに休みをとるのもヤバいし、指輪しているのも相当ヤバい。

とは言え、相手は昔の研究室の後輩である。
実在するのだ。
研究室のホームページにアーカイブで残っていた写真を見せられたこともある。
しかし、実在すると思うと、さらにまずい。
相手が実在しているのに、彼は「付き合って結婚する(した)」気になっている、という体で話を聞くことができてしまうのだ。

 

この遊びに気づいてからというもの、彼の惚気話を聞くのが以前にも増して楽しみになってしまった。
最初は普通に惚気話として、次は相手が実在しないクレイジー妄想話として、最後はストーカーの独白として。
一回で三度おいしい。
少し前に、そんな感じで聞いているという話を本人にしたら、笑ってツッコんではくれたものの、惚気話の機会が減ったような気がしている。
そろそろ嫌われるかも知れない。