少し前に青春ゾンビさんのエントリーを読んで興味を持った「0.5の男」を観終えた。
元々はWOWOWで撮られたドラマだったが、Netflixなど他のサブスクにも展開されていて、今は広く楽しめるようになっている。
松田龍平氏が40歳の引きこもり男を演じる本作。
暮らしている実家が、妹一家を入れた2.5世帯住宅に建て替えるという一大事に翻弄されていく姿を描いている。
両親、妹家族、そして0.5の引きこもり男…というわけである。
本作の主人公は、特に暴れたりしない。
そういう「引きこもり」の記号的なアクションはイベントは、全て済んだ後の世界になっている。
夜中までネットゲームをしていて日中寝てばかりいても両親は怒らないし、むしろ彼のためにご飯を準備してくれる。
深夜のコンビニでは、絶対覚えているだろうに干渉してこない優しい店員が応対してくれる。
でも、どうやらかつては大変だったらしいことが何となく透けて見えてくる。
壁に貼られた付箋たち、お父さんの腰痛、緊張で著しく劣化するプレイスキル。
ばら撒かれたそれらのピースが少しずつはまっていって、2.5世帯に辿り着く来し方を浮かび上がらせる。
一見ほのぼのしたホームドラマに見せかけて、かなり緻密に練り上げられたストーリーになっている。
それにしても、子役たちの演技が素晴らしい。
特に、主人公の甥っ子。
とても演技しているように見えない。
居眠りをする主人公の前でバグレンジャーのダンスを無邪気に踊る彼の姿を収めたあのワンシーンだけでも、本作の製作陣がとんでもないスキルを持っていることが分かる。
そして、本作の最重要場面である2.5世帯住宅のセット。
まさに金をかけるべきところに金がかかっている。
繰り返し登場するあのセットは、ドラマと舞台の中間のような、シチュエーションコメディにも似た気持ち良さがある。
監督を務めた沖田修一氏は、「子供はわかってあげない」とか「さかなのこ」を撮った人。
実は知らずに観始めたのだが、後から知って酷く納得した。
「さかなのこ」の監督だったら、そりゃあ好きになるし、子ども撮るのも上手いよ、と。
通常のテレビドラマと制作スタイルが違うせいか、映画畑の監督しての良さが存分に発揮されている。
特に、時間の使い方。
セリフに頼らず、動きや表情の変化で意図を伝えるタップリとした間。
連続ドラマではあれども、鑑賞中は気が抜けなかった。
それでも、1話1時間もないのでちょうど良い長さに仕上がっている。