童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2025年1月8日

去年は、結局1年間大河ドラマを見続けた1年だった。
それくらいに、「光る君へ」は新鮮で面白い作品だった。

戦らしい戦のない平安時代にあって、貴族たちの雅な生活ばかりが続いたのでは、とても1年間絵が持たないのではないか。
そんな風に思っていたのが、もはや懐かしい。
藤原氏がいかにして覇権をとっていったかを軸として、この時代を象徴する二つの超有名古典作品「枕草子」と「源氏物語」の政治的な役割を見事に描いてみせた。
奸計を巡らす権力者たちの静かな戦いは、下手な合戦よりも見応えのあるものだった。
そして何より、教科書でしか学べなかった当時の装束やら儀式やらの再現。
それだけでも価値のある作品だったと思っている。

ずっと追いかけてきて、最後は一体どうやって終わるのだろうと思っていたのだが、きちんと貴族たちの斜陽まで描いてみせたところも素晴らしかった。
終盤、突如太宰府が外敵に襲われる刀伊の入寇
辛くも退けたものの、それに対処する貴族たちの危機感のなさたるや。
藤原氏が目指してきた権力の集中の脆弱性が明るみに出る。
二世三世どころか一族で権力を掌握してしまったことで、大きく足を掬われることになる。

「光る君へ」は、藤原氏一強時代の翳りを見せたところで終わってしまったが、現代人である我々は、その後武士の時代が来ることを知っている。
平氏が台頭し、しかし彼らもまた藤原氏と同様の道を辿って滅びてしまう。
そんな後の世の展開すら予感させる、見事なラストだったと思う。

さて、今年は「べらぼう」。
江戸中期の町人を主人公に据えた作品である。
元々落語が好きだったこともあって、楽しみにしていた。

www.nhk.jp

第一回を観たけれど、既にハマりかけている。

またも合戦のない大河、と思わせてなかなか容赦なく江戸の暗い部分をしっかり描いている。
亡くなった女郎たちが素っ裸で打ち捨てられる様子を、日曜夜のNHKで画面に出したことは相当な覚悟だったろう。
現代よりもっと生と死が近かった当時の感覚が、生々しく伝わってきた。
花魁の衣装も道具も所作も、映像にされると説得力がある。
一方で、お稲荷さんに扮した語りの綾瀬はるかスマホを操作させて、マップ上の吉原の位置を令和の我々にも分かりやすく説明してくれる。
極めて現代的な演出と作り込まれた江戸の街を軽やかに行き来していて気持ちが良い。
大河ドラマに重厚さを求める層にとっては不人気だろうが、テーマになっている江戸町人文化と矛盾しない親しみやすさだと思った。

きっと今年も、大河ドラマを追いかける1年になるのだろう。
これをきっかけに、小三治師匠が鬼籍に入られてから足が遠のいていた寄席にも、また足を運びたいと思っている。