童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2023年9月18日

三連休が終わる。
出席した結婚式は、特に特別嫌な気分になることもなく、かと言って痛く感動することもなく、無事に終了した。

結婚式に限らず冠婚葬祭は、「式」であるからには予定調和が存在する。
宗教や好みの違いで多少のバリエーションはあっても、大体起きることは決まっているし、どこでどんな感情になるかは予定されたものである。
と言うか、そうなることを求められている。
いわば、食レポ必須の定食である。
おかずに違いはあれども、順番も品数もバランスも大体決まっている。
甘いところでは蕩ける笑顔を見せ、酸っぱいところでは涙を流して咽せ、しょっぱいところでは顔を歪めて水を流し込む。
でも最後には、美味しかったと満足しなければならない。

今回の結婚式は、ほぼ予定調和が崩れることもなく、当たり前のおかずが出されて見た通りの味だった。
予定調和が崩れる瞬間を求めがちな僕にとっては少し物足りない気もしたけれど、新郎新婦を始め多くの人にとっては望まないものであろうから、これで良かったのだろう。

さて、連休中、結婚式以外にも映画を2本観た。
その内の1本が、ウェス・アンダーソン監督最新作「アステロイド・シティ」だ。


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現在絶賛公開中なので内容には踏み込まない。
だが、出席した結婚式と並べてみて、映画の予定調和とは一体何だろうと考えている。
ウェス・アンダーソン監督作品は、一見すると、予定調和からはかけ離れたものである。
宇宙人が出てきたらこういう振る舞いをするハズ、天才少年少女たちがそれぞれの特技を活かして戦うハズ、家族の絆を確かめ合うハズ…
ハリウッド映画のお約束的予定調和をことごとく無視して、不条理に物語は進行していく。

しかし、見方を変えてウェス・アンダーソン的世界観で考えるなら、その予定調和のなさこそが、予定調和になっていないか。
彼の映画だったら、きっとこんな演出でこういう色遣いで、観る時のスタンスはこうしておくのが正解、みたいな。
ただ、今回の「アステロイド・シティ」は、そのウェスアンダーソン的予定調和を、自らオマージュしている、もっと言えばパロディ化して自己批判をしているように、僕には見えた。
もしかしたら、終盤に強調されるメッセージは、自らのスタイルみたいなものから一歩抜け出す(起き上がる)ことを目指す監督自身の誓いなのかも知れない。

などと言うことを考えながら、明日から始まる仕事という名の予定調和に備えている。