童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2023年9月20日

やはり金のかかった映画は違う。


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ケネス・ブラナー版名探偵ポアロ、もう本作で三作目となる。
実は、前二作も観ていて、ロケーション、俳優、衣装、美術…金に糸目をつけなかったのだろうと思うような豪華さで、劇場で観られる喜びが間違いなくある作品たちだった。

満を持しての三作目。
期待を込めて観に行ったのだけれども、とても良質なホラー娯楽作品に仕上がっていて、嬉しい驚きがあった。
もちろん基本線は推理サスペンスなのだけど、演出や展開は、まさにホラーそのもの。
段々と浮き彫りになっていく、人間社会が抱える諸問題。
母娘、戦争のトラウマ、ヤングケアラー、移民と差別…
現代に描くことに意味があるテーマを、ストーリーに必要な場面で提示していく巧みさ。
あくまで娯楽作品の体を保ったまま、ここまでの濃度で描けていることが素晴らしい。
ベネチアの街並みの息を呑むような映像は、IMAX版も良いかも知れない。

とは言え、ポアロを観にくる客層は、大抵推理サスペンスを好む層だと思われる。
そしてその層は、作中のポアロ同様、むしろホラーは苦手であろう。
だとすると、本作のような演出が取られると、(ある意味最も楽しめているのだけど)拒否反応が出てしまうかも知れない。
Twitterの感想を覗いているとそういった意見がちらほら見えて、本作の悲しき宿命めいたものを感じてしまう。
自分のような雑食タイプの人間には、とても素晴らしく映ったのだけど。