童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2023年9月22日

劇場版シティーハンター最新作を観てきた。


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ちゃんとシティーハンターだった。
何もかもあの頃のシティーハンターだった。
例え獠ちゃんがスマホマッチングアプリ観ながら女の子をスワイプしてようと、駅にはXYZが書かれた掲示板は残っているし、海坊主の店に海小坊主なるロボット店員が配備されようと、武器はバズーカのまま。
そうでなければならない。
だってファンムービーなのだから。
個人的には、そういう映画もあって良いと思っている。
おじさんおばさん世代が昔を懐かしむために観に行く作品として、きちんと需要に応える秀作だったと思う。
一方で、今の10代20代が本作を観てどれくらい楽しめるのかと言ったら、疑問符が付くだろう。

さて、シティーハンターと言えば、なんと言ってもTM NETWORKの「Get Wild」である。


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この曲が、ある意味シティーハンター劇場版の何たるかを示していると思う。
僕のようにシティーハンターの再放送を観て育った世代や、その上のバブルの記憶がある世代。
その辺りでなければ、この曲に共感なんて最早できないだろう。

近い音階をうろうろする小室印のメロディラインとかバックのシンセの音色とか、色々と時代を感じさせるものはあるけれども、やっぱり改めて聴いていて、歌詞の違和感が凄まじかった。
歌い出しからして、もう凄い。

アスファルト タイヤを切りつけながら

暗闇走り抜ける

チープなスリルに身を任せても

明日に怯えていたよ

車もバイクも贅沢品になりつつある本邦で、果たしてこの歌詞に共感する若者はどれくらいいるのだろうか。
チープなスリルも何も、先行きの見えない不安と突発的な悲劇を目の当たりにしてきた世代は、明日を諦観して日々を送っている。

Get wild and tough ひとりでは

解けない愛のパズルを抱いて

Get wild and tough この街で

優しさに甘えていたくはない

Get chance and luck 君だけが

守れるものがどこかにあるさ

Get chance and luck ひとりでも

傷ついた夢を取り戻すよ

甘えようにも、社会は豊かさを失って優しさという名の余裕を残していない。
守られたことがなければ守れないし、夢も見られないだろう。

この曲がヒットしていた頃は、平和で未来も明るかっただろうことが良く分かる。
その気配が観られなくなって30年近くが経過した今、どのくらいこの曲が今の若者たちの心に届きうるか。
そのくらい、令和の劇場に響く「Get wild」には、悲しい虚しさがあった。
シティーハンターをギリギリ愉しめる世代の一人として、若干の責任も感じてしまった。
ファンムービーも良いけれど、失われた若いsomebody's dreamを取り戻すために、この30年の総括と反省から逃げるべきではないだろう。