童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

ゴールド・ボーイ

多忙週間に入って時間の余裕なんて全くなくなるかと思ったけれど、今日は色々な人が協力してくれたおかげで、予定より割と早く終わった。
と言うことで、しばらく映画館に行っていなかったので、出かけることに。
本当はDUNEを観に行こうと思っていたのだが、調べると気になっていた「ゴールド・ボーイ」の上映回数がだいぶ減っていて、そちらを優先することにした。


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ドラマ化もされた中国の小説を原作に、日本版へリメイク。
沖縄を舞台に、とある連続殺人事件の犯人とそれに強請をかける少年たちというクライムサスペンスとなっている。
端的に言って、とても面白かった。
映画やドラマなど、俳優の演技が好きな人ほど、多分この映画が刺さるはず。
そういう作りになっている。

 

何年も前、「カメラを止めるな!」と言う映画が大ヒットした。
自分も大いに楽しませてもらったし、同僚や両親を連れて観に行って、その仕掛けの面白さを味わってもらった。
本作はあの仕掛けに通じるものがあると思う。
カメラを止めるな!」は、構成にしっかりと組み込んでその答え合わせまでしてくれる親切設計だったが、本作はもう少し巧妙に隠されている。
とにかく最初、主人公に妙な違和感があった。
と言うか、なんかちょっと下手な子だなと思ってしまったのだ。
何せ相手になっているのが、綺麗な顔をして狡猾な役をやらせたら右に出るものはないであろう岡田将生氏。
仲間の二人も達者だったので余計に目立ってしまった。
ところが、それにはしっかりとした仕掛けがあった。
それが徐々に明らかになるにつれ、羽村仁成と言う役者の器用さと構成・演出の巧さに、深く感心してしまった。
偉そうに舐めてしまっていた自分が、ギャフンと言わされてしまったのだ。

そしてもう一人、とにかく素晴らしかったのが、ヒロイン夏月を演じた星乃あんな。
モーニング娘。に加入したばかりの頃の道重さゆみのようなあどけなさで、見事なまでに「ヒロイン」を演じている。
ここ数年観た作品の中では、最も「女」を感じたキャラクターだったかも知れない。
わざわざ括弧付きにしたのは、文学作品上のいわゆる「女」的な意味合いを持たせたかったからだ。
全く非合理なようでいて筋が通っており、複雑怪奇なようでいて超シンプル。
彼女の存在だけが、この冷淡な犯罪劇の中で人間らしく光っている。
「女」の部分が、同じ女性である「母」に伝わっていく展開も見事。
海をバックに笑う彼女の姿は、ちょっとしばらく忘れられそうもない。

最後に、やはり本作の舞台を沖縄にしたことには大きな意味があったことを指摘しておきたい。

本作が今公開されることの必然性とか社会的意義がより強固になっていた。
学校の上を爆音を立てて飛んでいく米軍機、複雑な事情を抱える一人親家庭、巨大資本に縋り付くムラ社会
基地を押し付けていながら、青い海だの白い砂浜だの沖縄時間だのと、我々本土の人間に一方的に消費されてきた沖縄。
とかく楽園にされがちな沖縄の暗い現実を、本作は隠さず描ききっていて、尚且つそれが物語の説得力を産んでいる。
そもそも、主人公たちが抱えるものは、実は沖縄で分かりやすく表れているだけで、我々日本人の喫緊の問題でもある。
それを思わずにはいられないほど、切迫感をもったリアルさがあった。
その意味でも、沖縄はこれ以上ないくらい、ピッタリな場所だったと思う。

3/8公開の割に、上映回数がだいぶ減ってしまっている。
気になる方は是非、早めに観に行ってきて欲しい。