童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2024年9月7日

一昨日の夜、「ラストマイル」を観に行ってきた。


www.youtube.com

野木亜紀子さんが脚本を担当し、「MIU404」や「アンナチュラル」と同じ世界での出来事として描かれると話題になっていた。
「アンナチュラル」は放送当時、割と真面目に観ていた作品で、本作の予告が発表されてからと言うもの、観ていなかった「MIU404」をNetflixで観始めるくらいには、楽しみにしていた。

明らかにAmazonを意識していると思われる巨大ショッピングサイトの流通センターが舞台。
ブラックフライデーによって大忙しの商品出荷。
その中で突如、届け物が次々と爆発すると言う事件が起きる。

これ以上ないほどに、"いま"必要な作品だったと思う。
本作の大きなテーマとなっている「流通」は、おそらく今年最も大きな変化が起きたものの一つだろう。
長距離ドライバーの働き方改革によって、これまで通用していた流通の常識が通用しなくなっている。
それに加えて慢性的な人手不足。
おそらくこれから日本は、どんどんと流通の力が弱まっていくだろうことは想像に難くない。
その問題が目立つ形で噴出した今年に公開したのは、偶然かわざとか。
少なくとも脚本家の野木さんが、この問題の深刻さを強く認識していたことは間違いがないだろう。

実は、この作品を観に行った日のちょうど前日。
出張があって高速道路を運転する機会があった。
割と遅くなってしまって19時過ぎにSAへ寄ったところ、長距離トラックが所狭しと駐車されていて、入り口にまではみ出していた。
ドライバーの長時間労働を防ぐために休憩時間の取得が義務化されたことで、混雑を避けて他のSAに移りたくても移れないのだろう。
何とも言えない気持ちでそれを眺めていただけに、本作で扱う問題の深刻さが実感を伴って感じられた。

そしてもう一つ流石だと思ったのは、労働問題を大きく取り上げているところ。
上司や経営者、親会社や取引先といった利害関係で上下関係がはっきりとしている関係の中で、下のものが声を上げるには一体どうしたら良いのか。
その最も基本的な労働争議の形が、しっかりとエンタメに落とし込まれている。
犯人の思惑や爆弾の捜索、捜査官たちと販売会社の攻防など、サスペンス的な面白さがあるのはもちろん、戦うために労働者たちが団結し、一矢報いる姿に溜飲が下がる。
他者の苦しみや不遇にとても冷淡な最近の世相に対しても、大きな問題提起になっていると感じた。

本作を観終えた今、Amazonでポチることへの気楽さは大分揺らいでいる。
少なくとも、せめて商品はなるべくまとめて発送してもらうようにしようとか、置き配の指定を徹底しようとか、そう言うことはより気を付けたいと思っている。
きっと、本作を観た人の多くは同じ気持ちになったことだろう。
その一点だけ取っても、本作が映画化された意義は大きいと思う。