童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2024年2月27日

先月から「動物のお医者さん」の新装版が1ヶ月に1冊ペースで発売されるキャンペーンが始まった。

natalie.mu

新装版 動物のお医者さん(1) (ビッグコミックス)

もはや古典的名著に近い有名漫画。
この作品をきっかけに、北大獣医学部を目指す若者が増え、ペットしてのハスキー犬がブームになったと言う。
自分が物心ついた頃には既に連載は終わっていたのでそのブームを体感することはなかったが、中身を読めばそのブームも納得。
愛くるしい動物たちとクセのある学生・大学教員たちが織りなすコメディに、ページをめくる手が止まらなくなる。
しかもコメディの種類も、どこかローテンションで知的な雰囲気がある。
いわゆるハイテンションコメディというのは読んでいて疲れてしまうことがあるが、この作品でそういうことはない。
母親が入院時に本作をよく病室で読んでいたが、分かる気がする。
何より、獣医学部という漫画の舞台にピッタリとハマっていた。

多くの人がこの漫画で大学や大学院の雰囲気を知って、やがて憧れるようになったものと思う。
自分もおそらく、その一人だろう。
子供の頃には家に全巻揃っていて、確か小学校高学年くらいの時に読んだはずだ。
当時から主人公たちの先輩で変わり者の菱沼さんと、主人公たちの指導者である漆原教授が、僕のお気に入り。
こんな変わった人たちがいるなら、大学というのところは面白いに違いない…と思ったような気がする。
少なくとも、大学に対して良い印象を持ったことは間違いない。

さて、早速新装版の第1巻を購入して読んでみたのだが、今も変わらず面白いし、大学は魅力的だった。
もちろん中身はかなり時代を感じさせるものではあった。
令和の時代に酒瓶を呑みながらリレーする競技は運動会でできないだろうし、患畜の取り違えも血液検査用サンプルの取り違えも簡単には起こらないはず。
それでも、学生も教授もイキイキしていて、自分が体験してきたことと照らしても、ちゃんと延長線上にいる感じがある。
大学教員の部屋は人によってガラッと雰囲気が違うし、ズボラな学生は先生に怒られていたし、その逆もあった。
今も菱沼さんや漆原教授のような人たちが身の回りにいると思っているし、その意味で子どもの頃に好意的に思った環境に身を置けているような気はしている。
ある意味で、子どもの頃の夢を叶えた…と言えなくもない。

ただ、大学の状況は、連載当時に比べて厳しいことは間違いない。
毎年のように減らされる予算、教員の定数も減らされ、学生の数も減っている。
教員は会議やら研究費獲得、授業に忙殺され、学生は就活やら資格試験やらに忙殺されている。
本作のようなイキイキとした大学の雰囲気は、だいぶ薄まっているかも知れない。
新装版をきっかけに、また大学院に憧れて飛び込んでくる若者がいるとして、少なくとも彼らが絶望してしまわないようにしたいと強く思う。