童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2024年2月1日

「作りたい女と食べたい女」を観ている。

www.nhk.jp

漫画原作のドラマで、2022年に放送したシリーズの続編が現在放送されている。
料理好きな主人公・野本が、せっかく作っても少食で消費が追いつかないことを嘆くところからスタートする。
ひょんなことから同じマンションに住む春日に出会い、食べるのが大好きな彼女に料理を振る舞うようになっていく。

ここで美味しいご飯を一緒に作りながら日常が進んでいけば、まあ普通のドラマかなと思うところだが、本作はさらに二人の関係に踏み込んでいく。
一体彼女たちのこの関係は、何なのか。
確かに居心地が良くて互いを好ましく思っていることに間違いはないが、果たして恋なのか。
一体、どう分類すれば良いのか。
同性愛という言葉を敢えて出しながら、名前のない感情・名前のない関係に迫ろうとしている。

似た題材を持った作品と言えば、テレ東で放送されていた「きのう何食べた?」だろう。
こちらは中年のゲイカップルを主人公に据えて、料理を主軸としたそれぞれの日常を切り取った作品だった。
ただ、こちらの主役二人の関係ははっきりしている。
どちらも同性愛者であることに自覚的だし、互いの関係もしっかりと認識できている。
その意味で「作りたい女と食べたい女」とは、ちょうど対になっていると言えるだろう。

性欲が介在した好意は、関係を単純化して分かりやすくしてくれる。
はっきり「好き」と分かるし、ゴールも明瞭である。
しかし、世の中には色々な「好き」が存在する。
お互いの存在が救いになったり、安心できたり、心強く思ったり。
手を繋ぎたいとかキスしたいとか思わなくても、そういう相手が現れることもある。
未定義の感情が去来した時の戸惑いが、本作では非常に丁寧に描かれている。

僕自身も、人のことを性的に好きになるということがないので、ある意味本作の主人公にかなり近い存在と言える。
確かに10代や20代くらいの頃は、他人のように恋人関係を持てない(持とうと思えない)ことにコンプレックスを感じたこともあった。
現在は大分その気持ちも形を潜めて、名前がないままに自分のあり様を受け入れつつある。
このドラマは、ちょうど少し前の自分を観ているような感じがして、少しだけ懐かしい気持ちで視聴している。
戸惑いつつも仲を深める二人が、この先もどんな未来を描くのか。
少し年老いた当事者の一人として、楽しみに見届けようと考えている。