童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2023年11月22日

数日前のことになるが、羽生結弦氏が離婚したというニュースが起き抜けに脳を駆け抜けた。

加熱するパパラッチやファンの行動に疲れ、やむなくの決断だったようだ。
何とも痛ましい話で、自分にもどこか恥いるものがある。
結婚のニュースを観た時に、一体どんな女性と…?と思ってしまう自分がいた。
その延長線上に、彼らを追い詰める何かがあった気がしてならない。

僕は、羽生結弦という人間は、ある種のアイドルだと思っている。
たまたまフィギュアスケートという競技を選択して表現していただけで、おそらく彼は「羽生結弦」以外にはなれない人だろう。
それほどに輝くスター性を持っていて、みんなの興味をとんでもなく引き付ける吸引力を備えている。

現役時代のパフォーマンスはもちろんだが、僕が彼のアイドル性を強く認識したのは、今年2月に開催した東京ドームのアイスショーだった。
演出を担当したMIKIKO先生+rhizomatiksは、僕の長年の推しであるPerfumeではお馴染みの組み合わせということで、友人とDisney+での配信を観たのがきっかけだった。
最初から最後まで、氷上を滑るのは彼一人。
延々と続くモノローグ、モノローグ、モノローグ…
彼の戦いと苦悩の歴史が、躁鬱の脳内をそのまま切り取ったような進行で描かれていく。
あそこまで追い込まれる姿を、そのまま晒せる勇気たるや。
特に、北京五輪の記憶の更新を、6分間練習からやっているのには脱帽してしまった。
数万人の観客を前に、よくぞ練習の姿から見せようと思ってくれたし、かつ、それですらショーにできるという確かな自信みたいなものさえ感じた。
本人再現映像というか、ほぼ「羽生結弦」のドキュメンタリー。
精神的に不安定だった中学生頃に彼の存在を知っていたら、少しやばかったかも知れない。
多分、その種の人々と特に共鳴する危険な光り方をするアイドルだと強く感じた。

だから、結婚のニュースを聞いた時には心底驚いてしまった。
幸福で満たされている彼のことが、どうしても想像できなかったのだ。
何なら、あの表現を続けるために、自らの幸せを放棄する人じゃないかとさえ思っていた。
なので、結婚のニュースは、ある意味で嬉しい裏切りだった。
ただ、お相手の方は誰にせよ、きっと苦労するに違いないと思った。
彼は表現の道が最優先であろうから、大事なアイスショーがあれば平気で家を長期間空けそうな気がしたし、仮に家にいたとしても、ずっと彼が苦しむ姿を横で見ていなければならない。
並大抵の覚悟がなければ難しいだろうと、勝手に相手の女性をとんでもない傑物と尊敬さえしていた。

ところが。
正直離婚の報道を最初に聞いた時には、ああやっぱり…と思ってしまった。
その厄介な報道陣やファンを抱える受難も含めて、やはりどこまでいっても「羽生結弦」だなと感じてしまう。
まさに、アイドルだ。
決して熱狂的なファンではないが、僕もまた、彼の放つ黒い光に興味を引かれている一人と言える。
定期的に様子を知りたい人の一人であることは間違いない。
ただそのことが彼を苦しめて、今回のような悲しい決断をさせてしまったと言えなくもない。
強いジレンマを感じている。