童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2023年12月18日

今日は一日中、仕事場の後輩の元気がなかった。
元気がない理由は知っている。
先週事情は聞いていて、そのことをずっと引きずっているのだろう。
正直、まあ良くあることなのでそんなに気に止む必要はないと思うのだけれど、本人が酷く気にしているので、今のところ核心に触れるようなことは言っていない。
ただ、半分くらい仕事に関係するような事情だし、一人で抱えて困った状況に陥っても可哀想なので、どこかで話を聞いておいた方が良いのではないかとも思っている。

こう言う時、うまく事情を聞くように仕向けるのは、なかなか骨が折れる。
いざ聞いてみて答えが返ってきたとしても、後から聞き方が良くなかったのではないかとうじうじ考えてしまう。
お互いに信頼関係があれば何とかなる…かも知れないが、この世に信頼度を測る機械は存在しない。
むしろ、親しき仲にも礼儀あり。
ちょっとしたやりとりでもやり方を間違えれば、信頼が失われてしまうことだって大いにあり得る。

こう言う時、組織に必ず一人はいる「空気の読めない人」が重宝される。
わざわざ括弧に入れたのは、実態はともかくとしてそのように周囲から認識されている人、と言うニュアンスを込めたかったからである。
この種の人は、周囲もある程度その発言に注意して体を硬くするし、ある程度の無礼も大目に見てもらえる。
大抵、その扱いを許される独特の愛嬌を身につけていることが多い。
彼ら彼女らは、みんなが気になっていたけれども気を遣って黙っていたことを、持ち前の天真爛漫さでぶち抜いてくれる。
王様の耳は、ロバの耳。
●●さんはいつもしょうがないな、とか言いながら、みんな心のどこかで溜飲を下げている。

大学院生の頃の隣の研究室に所属する先輩が、まさにそんな人だった。
ちょっと奇抜な人となりで、初めて会う人は大抵面食らってしまう。
たまにPCの前で奇声を発するし、しょっちゅう仲間達を従えて飲み屋街に消えていくし、準備が終わらなくて途中から白いスライドのまま発表に臨んだりするし。
ただ、この人は決して、空気が読めないわけではなかった。
その証拠に、マンツーマンに近い状況で飲みに行って真面目な相談をしたりすると、とても親身になって聞いてくれるのだ。
そしてその思考も、よくよく聞いてみれば極めて真っ当かつ誠実。
見た目や言動や行動に騙されなければ、中身はとてもまともな人だったのだ。
だからいつしか、大人数の時に見せる彼の振る舞いは、実はそう言う「役」を引き受けてくれていたのではないかと思うようになった。
何もかも演技だったとは思わないが、少なくとも彼は場の空気を読んだ上で、あえて切り込むようなところがある人だった。

本当は僕も、そう言う人でありたいと思っている。
そんな度量はないことは分かっているのだけれど、それでも憧れてしまう。
空気を読めないわけではないと思っている。
あとは、その空気に負けずに突破する勇気の問題だ。
とりあえず明日、落ち込んだ後輩の事情に切り込むところから始めてみようと思う。