童貞見聞録

アラサー超えてアラフォーのセクシャルマイノリティ童貞野郎が心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつけるブログ

2024年3月14日

一昨日ちょっとした出張があり、付き合いもあって温泉宿に泊まってきた。
ホテル三日月ほどは大きくないけれど、まあまあ大きなリゾート温泉ホテル。
夕食も朝食も割と豪華なバイキングが用意されていて、それでも一泊1万円強。
平日とは言え、随分と安いんだなと驚いてしまった。

コスパの良さ以上に驚いたのが、客層だった。
ご高齢の世代ばかりかと思っていたら、むしろ若い人が多い。
大学生くらいのグループやカップルが沢山いて、食事の時にもとても楽しそうにはしゃいでいたのが新鮮だった。
確かに大学は春休みシーズンだろうし、平日に出かけるのは可能なのだろう。
が、それにしたってこんな大昔に流行った古臭い温泉リゾートに来なくても…と正直思ってしまった。
自分が大学生くらいの頃は、まとまった休みと言えば貧乏海外旅行が主流だったからだ。
社会人になったら長期の休みを取って、少し治安が悪そうな地域まで冒険することは難しくなる。
体力も時間もある今だからできることってことで、そういう旅行に行く人が自分の周りも含めて多かった気がする。

しかし、よくよく考えてみれば、今の若者たちが温泉リゾートで遊ぶのは至極当然のことだよなと思い直している。

一つは、恐ろしいほどの円安。
自分が学生だった頃は民主党政権で、むしろ円高だったから、海外旅行は決して手が出ないものではなかった。
今はヨーロッパに行こうとしたら飛行機代だけでも数十万。
サーチャージもどんどん上がっているようだし、現地の宿泊費も移動費も飲食費も全て高い。
必死に貯めたバイト代を全て使ってたった数日の貧乏海外旅行に出かけるより、コスパもタイパも良い国内温泉リゾートに出かけてゆったりした方が遥かに楽しい、と思ったって何ら不思議ではない。

もう一つ、コロナ禍で移動教室やら修学旅行やら合宿やらができなかった、というのも大きいだろう。
彼らはきっと、友達と同じ部屋に泊まってワイワイ騒ぐ体験に飢えている。
場所なんかどうだって良い。
気の合う仲間と一緒に旅行して、一緒にお風呂に浸かって、ボードゲームで遊んで、枕投げして、先に寝落ちた奴の顔に落書き描いたりしたいのだ。
自分含めて上の世代が、(良いか悪いかは別として)当然のように経験しているあれこれを、そもそも彼らは禁じられていた。
そういう旅行に良い思い出がない人だって沢山いるだろうが、最初から選択できないことは、理不尽極まりないことだと思う。
リゾート温泉ホテルではしゃいでいる若者たちは、中高年世代のそれとは全く違った切迫感で、青春を取り戻していると言えるかもしれない。

…と殊勝なことを考えつつも、実は混雑した食事会場や大浴場を見て、少し辟易してしまった。
コスパの高さに感心はしたものの、やはり自分は、古臭くて汚くて、でも温泉はちゃんとしている旅館に、一人で良いから泊まりたい。
彼らよりお金は持っているのだし、ちゃんと大人らしく場所を譲ってあげるべきだろう。
などと、とても偉そうなことを思ってしまった。